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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第16章 神に捨てられた子

「天幕の中で息を潜めていたのも、共に村に来た妻子だな!? 貴様らがヘラヘラと訓練の真似事をしている間っ…自分の家族をこいつ等に差し出していたのか」

「しっ仕方なかったンすよ!」

「そんな訳があるか!一家の主(あるじ)ともあろう者が…ッ」

「だってこうでもしないと職を失うんです!仕事がねぇと…おれらは賤人(せんにん)になっちまう!」

「……!?」

「それよりは、ねぇ?賤人よりかずっとマシじゃねえですか…………ははは」

「マシだと?これが……」

 バヤジットは男の言う事に呆れた……と言うよりは、率直に理解ができなかった。

 今もこの男の顔にバヤジットへの媚びこそあれど、妻子を好きにされる事への悔しさがまるで無い。

 本気で、今の状況に納得しているのか?


 ──これで、マシ?




「──…ウッダ村の現状を陛下に報告する」

「バヤジット様!それだけは…ッ」

「近衛隊としての任を放棄し陛下を侮辱した罪。日のある刻より性交におよび神を侮辱した罪。…罪状はまだ増えるだろう。覚悟しておけ」

 バヤジットは片足にすがる男をゆっくりと引き剥がして扉の横へ転がした。

 そして反対を見やると、まだ線の細い少女が乳房もあらわな姿で床に座って震えている。

「ぅ……ぅぅ……!! 」

「……っ」

 彼はその姿に心を痛め、自らの肩布を脱いでかけてやる。

 それが一時の気休めでしかならないと知っているから、余計に怒りが沸き立つのだった。









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