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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第17章 ハンマームにて(前)
今の彼が食べているのは、开心果(ピスタチオ)を砕いて小麦と混ぜた焼き菓子だ。
「よっ、バヤジットさま!このたびはすごく世話になりましたありがとう!」
「っ…!? 」
「……オメル、敬語がちょっと不自然だね。今度僕が教えようね」
「そ、そうか?ごめんなさい」
シアンに指摘されて素直に謝ったオメル。
バヤジットは俯いたオメルをまじまじと見下ろした。
兵団の部下であったなら叱咤したであろう。そんな短気なバヤジットでも、この少年を怒るのは気が引ける。
「……」
「……っ」
お互い黙ってしまったので、代わりにシアンが間を取り持つ。
「浴場(ハンマーム)で湯治をしてくるようにと、オメルに外出許可をくださいましたね?それで彼はクオーレ地区から出てこられたのです」
「なるほどな。それでお前達はここにいるのか」
「オメルひとりで街を歩かせられないので、こうして僕もついてきました」
「まぁそれがいいだろう。お前も ついでに 身体を休めてこい」
「……」
「…っ…まだ何か用か」
シアンが相変わらずの笑顔を貼り付けてこちらを見るので、バヤジットは悪い予感しかしない。
「言いたい事があるなら早く──ッ」
「…お気付きですか、バヤジット・バシュ。僕とオメルのふたりで出向けば、浴場でナニが起きるのか」
「ナニがとは、何がだ」
「……愉しい時間になりそうですネ 。僕は身体を休めるどころではなくなりそうですが」
「……!!」
シアンの意図を察したバヤジットが、舌を打つ代わりに歯を強く食いしばる。
広場の石畳を睨んで、その後オメルを睨んで、隣のシアンを横目に睨み付けて──
最後に目を閉じたバヤジットは、声を震わせて呟いた。
「待て、俺も共に行く……!!」
「そうですか。僕達はいっこうに構いません」
「──???(えっえっ?大丈夫か?バヤジットさますごい顔が怖いけど大丈夫か?)」
───