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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第17章 ハンマームにて(前)
浴場(ハンマーム)とは、蒸気を満たした石造りの室内で、身体を温めて汗をかき、身体を洗う場所である。
これは西の国々から渡って来たらしく、東の帝国には無い文化だ。最も──西の国では浴場は非営利施設として民衆に開放されているらしいが、キサラジャでは金持ちだけが使える高価な娯楽施設だ。
「ふーん、なんでだ?」
「水は余るほどあっても、それを熱するための大量の木材がキサラジャでは手に入らないからね。贅沢なんだ」
「へー。(わくわく)」
いつものようにシアンが説明して、理解できたのかわからない返事をオメルが返す。
二人──ではなくバヤジットを加えた三人は、脱衣所で衣服を脱ぎ、腰布だけを身に付けて蒸し風呂に足を踏み入れた。
義手を濡らしてはいけないので
肘あてから下も同じように置いて行く。
「……すごいな、……熱い」
「蒸し風呂だからね」
「みんな熱いの我慢してるのか?」
「最初は慣れないだろうけれど、ここで汗をかいた後は汚れが落ちてサッパリするよ?」
意気揚々と入ってすぐ、真夏の砂漠に匹敵しそうな暑さに、オメルは早くもたじろいだ。
初めてならそうなるだろう。
蒸気の噴出口に近付くほど温度は上がるので、シアン達はまず噴出口から遠くに向かって歩いた。