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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第3章 入隊の遊戯
「──…僕宛に届けられたものです」
「それは…」
手筒を衛兵へ差し出すと、彼等の顔色が変わる。
「推薦状だな──…。何故貴様がこれを持っている?」
「ですから、送られてきたのです。送り主の名はわかりませんでしたが」
「……」
確かに、送り主の名は書かれていなかった。
例外的にではあるが、貴族がこうやって気に入った者を隊に推薦する事があるのだ。それを許されているのは伯爵以上の高貴な身分の者だけ。
「──…『 シアン 』
ここに記されているのが、貴様の名か?」
「……ええ、間違い御座いません」
《 ──して、シアンと名乗る此の者を、近衛騎兵師団へ推薦するものとする 》
短い文面の最後はその一文で締めくくられていた。
そこに記された通り、青年は自らを『シアン』と名乗った。
家名を持たぬ身分故──ただ、シアンとのみ答えるしかない。
「上官殿へつないでもらえませんか」
「……!」
衛兵達が手筒を読み終えて少しの沈黙が流れ……そして互いに顔を見合わせた彼等は、どういうわけか、突然笑い出す。
「……くくく」
「……」
「ああそうかそうか!疑って悪かったなぁ新人!案内してやろう。付いて来い」
突然機嫌をよくしたひとりが、もうひとりをその場に残して門の中へ進んだ。
青年──シアンというその青年は、何食わぬ顔で後へ続く。
門の内側はクオーレ地区と呼ばれる貴族の居住地だ。
爵位を持たない者は住むことを許されず、仕事をこなす間だけ、例外的に足を踏み入れられる場所。