この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第3章 入隊の遊戯
キサラジャには四つの身分がある。王族、貴族、平民、そして賤人だ。
上流階級である貴族達は、国の政(まつりごと)と軍事をこなす。彼らは「侍従」として政務に関わるか「近衛兵」や「王宮警備兵」となるか…、それぞれの立場で国を支配する。
その他の仕事は平民の役目だった。彼等は商(あきない)を親から引き継ぎ、得た財の一部を税として国に納める。その代わりとして、国から物資の支給を受けた。
つまり従順に役目をこなしていれば、食べ物も寝床も保障される立場だ。
だがそんな平民と似て非なる存在が、賤人(せんにん)と呼ばれる者達だった。
彼等は平民と違い、国に税を納めない。
「はぐれてくれるなよ。ここは王宮にも繋がる広場だ。本来お前のような卑しい賤人が歩いていい場所じゃない」
「承知しております」
「ふん…、立場はわきまえているようだ」
このシアンという青年は、まぎれもなく賤人の身分であった。
衛兵の男が何故それを知っているのか…それはシアンが家名や職名を持たないからだ。
税を納めず何処にも属さず
一聴すれば 自由 ともとれる立場。
しかし誰のひとりとして、自ら賤人になりたがる民はいない。
民(たみ)と認められていない彼等は、キサラジャの法で守られないからである。
そんな賤人にとって暴力、略奪、嘲笑は日常茶飯事。ある日突然、憂さ晴らしに殺されることもありえた。