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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第3章 入隊の遊戯

 キサラジャには四つの身分がある。王族、貴族、平民、そして賤人だ。

 上流階級である貴族達は、国の政(まつりごと)と軍事をこなす。彼らは「侍従」として政務に関わるか「近衛兵」や「王宮警備兵」となるか…、それぞれの立場で国を支配する。

 その他の仕事は平民の役目だった。彼等は商(あきない)を親から引き継ぎ、得た財の一部を税として国に納める。その代わりとして、国から物資の支給を受けた。

 つまり従順に役目をこなしていれば、食べ物も寝床も保障される立場だ。

 だがそんな平民と似て非なる存在が、賤人(せんにん)と呼ばれる者達だった。

 彼等は平民と違い、国に税を納めない。


「はぐれてくれるなよ。ここは王宮にも繋がる広場だ。本来お前のような卑しい賤人が歩いていい場所じゃない」

「承知しております」

「ふん…、立場はわきまえているようだ」

 このシアンという青年は、まぎれもなく賤人の身分であった。

 衛兵の男が何故それを知っているのか…それはシアンが家名や職名を持たないからだ。

 税を納めず何処にも属さず

 一聴すれば 自由 ともとれる立場。

 しかし誰のひとりとして、自ら賤人になりたがる民はいない。

 民(たみ)と認められていない彼等は、キサラジャの法で守られないからである。

 そんな賤人にとって暴力、略奪、嘲笑は日常茶飯事。ある日突然、憂さ晴らしに殺されることもありえた。



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