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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第18章 ハンマームにて(後)


「これから先、僕がいなくなっても──…君は将官を頼れば大丈夫だからね」

「──!」


 跳ねた足がストンと地面に着くと同時に

 シアンの言葉を聞いたオメルは立ち止まった。


「……シアンは、いなくなるのか?」

「……」

 肯定も否定もしない。

 数歩先を歩いていたシアンが、そっと後ろを振り返る。彼は自らも足を止めた。

「僕が消えたら寂しいかい?」

 寂しがるに決まっている。オメルにとってはシアンだけが仲間だ。ひとりは不安に違いない。

 だから彼をバヤジットと引き合わせた。

 バヤジットはああいう男だ。オメルに危険がおよぶなら…必ず守ってくれるだろう。

 それでもオメルはきっと、どこにも行くなとダダをこねる──シアンはそう予想していた。


 けれど


「そりゃあ寂しいけど、しかたないか」

「……!」

「だってオレたちずーっとこんなトコにいるつもりないもんな!オレだっていつかは父ちゃんのいる村に帰るんだ。シアンだって…」

 まったく取り乱すことをせず、オメルは大人しく受け入れた。

「シアンにだって帰りたい場所があるんだ、だろ?」

「…帰りたい、場所?」

「シアンがここに来た…目的?よくわからんけどさ、それが叶ったら二人でここを出よう」

「……っ」

「オレたちは貴族じゃない、から、どこだって行ける」

 少しの寂しさを漂わせて明るく言い切ったオメルを、シアンは思わず見つめ返した。

 オメルの丸く愛らしい目は、自分の夢を、そして、シアンの事を──真っ直ぐな心で信じていた。



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