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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第19章 砂塵に紛れ
『 侍従長がこの件を操っているのだとすれば
その矛先は勝ち目の無い帝国では無く
むしろ──…皆の関心が帝国に向いた今の
この隙だらけの王都にあるのでは? 』
シアンの推測がバヤジットの脳裏をよぎる。
「バシュがそこまで気にしているのは、ウッダ村での一件が理由ですか?」
「ああ……そこの民兵から得た情報では、タランによって平民がクオーレ地区にも集められているらしい」
「その情報の信ぴょう性は疑わしいですね。クオーレ地区に平民を呼び寄せるなんて有り得るのか…」
「さてな」
ウッダ村から戻った後、バヤジットは密かに調査をおこなっていた。
クオーレ地区に爵位を持たない者が入るには、限られた者にのみ配給される通行手形が必要だ。家名と職名は門兵によって記録され、誰がいつ中に入り、いつ出たのかを厳しく管理される。
バヤジットはその記録を全て洗ったが、平民の不自然な出入りを見つける事はできなかったのだ。
「ではやはり嘘の情報であったと?」
「そうとも限らん。俺はそれと別に先月の徴税記録も調べさせた。近隣の村から姿を消した平民の数と名を把握し…ウッダ村にいる民兵達と照合したのだが…、数がまったく合わんのだ」
「…っ…合わないとは、つまり…!?」
「ああ…国民が " 何処か " へ消えている。行方不明者は全て独り身の男ばかりだった」
バヤジットの調査報告を聞いた部下達がざわついた。
「まさか本当にクオーレ地区に平民が隠されているのですか?隠れ場所は…?」
「軽く探したが勿論見つからん。…だがこの場合もっとも怪しむべきは、何処に隠されたかよりも、" 何処から侵入したのか " だろう」
「…っ、確かにクオーレ地区の門はたったひとつ。門兵の記録に無いとなれば何処から…?」
「恐らくその謎が、有力な手がかりになる」
行方不明の平民達が本当にクオーレ地区に紛れているとすればな
と、バヤジットが最後に付け加えた。