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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第19章 砂塵に紛れ
それから一刻後、クオーレ地区の外
砂塵に紛れて街を移動する白装束の人物がいた。
「──…」
砂避けの知恵として複雑な街路を構成するキサラジャの居住区は、まるで迷路のよう。
けれど、全身を覆う白い上衣から時おり目だけをのぞかせて…
歩くその足先は、ひとつの場所を迷いなく目指していた。
隘路(あいろ)を抜けた彼は、街の最南端に位置する砂地に出る。
ここはキサラジャ建国当時からの小さな神殿があった場所だ。今は王宮の北にある大神殿以外はここも含めて全て破壊されている。
神殿の残骸である石造りの柱と剥き出しの基礎が残る、殺風景な場所。
そんな瓦礫の山の中に、何故か彼は入っていった。
ところどころ砂を被った柱が折り重なるようにして守っていたのは、もう使われる事のない聖なる祭壇と
その下に隠された
地下通路への階段──。
彼はそこを下っていった。
松明(たいまつ)も何も無い狭く暗い階段を、外の弱々しい月光が微かに照らす。
風の音が消えた。
潜めていた足音がその静寂に響いた時──
彼の背後を、ある男が呼び止めた。
「何処へ向かっている?この先は袋小路であるぞ」
「──…!」
「地下への通路は閉められている──…九年前に " ある罪人 " が、この抜け穴を使い王の寝室から都外へ逃亡したのでな」
白装束の人物は下る途中で立ち止まる。
予期せぬ声に呼び止められ、彼はその場に静止した。