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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第19章 砂塵に紛れ
振り返るが、階段の上からこちらを見下ろしてくる相手の顔は、逆光で見え辛い。
「こんな所に潜り込んで何をしようとしていた?不審な者よ」
「……フ、貴方こそ、ここに居るのですから不審なのは同じでは?」
逃げ道が限られた空間で、慎重に言葉を選ぶ。
すると相手の男が薄笑うのを感じた。
「生意気な態度はあまり勧めないな。…私はその気になればすぐにでもお前を捕え、処刑できる立場だ」
「……」
「どうするのだ?」
「…わかりました」
白装束の人物は、観念したように顔を出した。
薄暗い中にしっとりと浮かび上がる端正な面(おもて)…
地下通路に侵入したその人物はシアンであった。
そして、シアンを呼び止めた男の正体は
「──…侍従長様に逆らう事など、僕ごときにできる筈がありませんから」
「…ふん」
議会を掌握し国王の寵愛を独り占め
侍従長の名を欲しいままに権力を操る、ラティーク・タラン・ウル ヴェジール、その男であった。