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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第20章 冷たい手枷

 シアンはスっと両目を閉じた。

 動揺で泳いでしまう目を…バヤジットに見られないようにするためだった。

「何故目を閉じる…こちらを向け!」

 再び顎を掴んで引き寄せられる。

 ゆっくりと瞼を上げれば、凛々しい眉を寄せて此方を睨む男の顔が迫っていた。

「真実だけを言え、答えろ!」

「…ッ」

 だがバヤジットの怒号を眼前に、シアンはもはや唇を引き結ぶことしかできない──。

「…っ…言え!お前は承知と思うが俺は気が短い」

「……」

「なんだその冷めた目は……」

「……」

「少しは弁解したらどうだ?口が達者なお前であれば簡単だろう」

 シアンの目から反抗心は感じない。

 この尋問を耐えしのぶ、そう決めて後はただ時が過ぎるのを待つ気らしい。

「…ッ…この…!!」

 たまらずバヤジットは一発、彼の顔面を叩いた。

 渇いた高音が響き──

 シアンの手首に繋がった鉄枷が軋んだ。

「クッ…─ッッ」

「…ッ…はぁ、はぁ」

「……。…ペッ」

 身体を脱力させ、叩かれた方向に顔を向けたシアンが、赤い血の混じった唾を床に吐き捨てる。

 殴るバヤジットを挑発するかのような態度だ。

 それを見て──さらに一発

 バヤジットの拳が彼のみぞおちに食い込む。

「カ──ハッ!‥ガハッ!‥‥はっ、ハァ!‥ガハッ!」

「シアン…!」

「…ハァッハァッ‥‥カハッ…‥!!…‥ハァッ‥‥ゴホッ!ゴホッ!」

 嫌なトコロに命中し、苦しむシアン。

 




「…どうしてだ」


 咳き込む彼を見下ろすバヤジットも同じように……その顔を苦しげに歪ませた。



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