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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第20章 冷たい手枷

「そもそもこんな手ぬるい、尋問……
《指切り将軍》の名で恐れられる貴方らしくもない」

「……!」

「もっと冷酷に振舞ってはどうです?かつての貴方がそうしたように」

「やめろ!その話はするな…!!」

 ハッと息を呑んだバヤジットの顔が青ざめたのは言うまでもない。

“ 何故、その呼び名を…っ。これもタラン侍従長から教えられていたのか? ”

 そらさず真っ直ぐ見上げてくるシアンの瞳。

 尋問する側のバヤジットだが、まるで自分の方が過去を暴かれ、彼に責められているかのようだ。

「フっ…僕が知らないとお思いでしたか?貴族から疎まれ嫌われ者のバヤジット様にとって、好意的に接してくる部下は数少ない」

「……やめろ」

「 " 貴方の過去を知らないよそ者の僕 " だったから…バヤジット様は僕を信用した。僕を相手にしている時だけ──貴方は《指切り将軍》でなくなるからだ」

「──そうではない!俺はっ…お前を…」



────ギィ...



「…!?」


 シアンの話を遮り叫ぶ

 思わず声を荒らげた余裕の無いバヤジット。



 だがそこで、扉の開く音が鳴った。



 誰かがこの懲罰房に入ってきたのだ。

 足音は迫る。

 二人が声を止めて牢の外を見ていると…、鉄格子の向こうに、新たな客が現れる。

「…っ、スレマン・バシュ」

「騒がしい夜だと思い来てみれば……何やら面白い事が起こっているな」

 近衛隊、槍兵師団将官、ハムクール・スレマン・バシュ。

 シアンの近衛隊入隊を許可したあの男である。

 錠の下りていない格子戸を開け、スレマンが牢の中に入ってきた。



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