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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第22章 復讐者の記録──参
『 なッ…んのつもりですか、…ハァ、ハァ 』
いつもの事ながらこの男の情緒には全くついていけない。
乱れた息をぐっと堪え上目遣いで睨む少年だが、ヤンは悪びれもしなかった。
『 …確かにお前は男娼の素質がある 』
『 …? 』
『 だが最適じゃあない。いいか覚えとけ──…客を悦ばすだけが手だと思うな。相手を翻弄し夢中にさせ心酔させろ 』
『 …っ、わかっ てる… 』
『 ……どうだか、な 』
頭を掴んで、ポンッと軽く突き放された。
弱っている少年はそれだけで仰向けに倒れてしまい、ヤンはやれやれと溜め息をつく。
『 ──っと勝手に休むなよ。ほらさっさとこの面倒な手筒を片付けろ 』
『 …貴方…ほんとに性格(たち)が悪いですよね…!! 』
『 いくら褒めても休ませないからな 』
『 〜〜〜!! 』
まともな会話のできない相手に少年は文句すらも言えず、諦めて衣服の乱れを直す。
『 煙管の灰で床が汚れた。後でここも掃除しておけ 』
『 …… 』
返事をしない事が、せめてもの反抗だ。
だが歯向かいすぎるとまた襲われかねないので加減が難しい。少年は嫌々ながら卓上から筆を取り、ひとつの手筒に目を通した。
──男娼は身体を売るのが商売だが、ヤンに心酔する者の中には心まで求める愚かな者がいた。こぞってヤンの機嫌をとるのだ。
…いったいどちらが客なのやら。
下心丸出しの文言を流し見た後、少年はその返事を別の紙にしたためる。
ヤンの代筆だ。
『 前と同じ要領で書きますけど 』
『 よろしく頼む。気の利いたひと言も書き添えとけよ 』
『 …そんなの知りませんけど 』
『 自分の為と思って練習しておけ 』
勝手な事を言い、自分は寝そべるヤン。貴方がラクしたいだけだろという罵りは噛み殺した。