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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第23章 引き止める者

「そうか、将官から聞いたんだね」

「部屋に閉じこめたシアンがっ…ぜんぜんメシを食べないから困ってたよバヤジットさま。出したメシにひとつも手をつけないから、このまま餓死するつもりかって心配してた…!」

「──そうだよ。それで衰弱したフリをして倒れた僕に、今しがた見張り人が気付いてくれてね。慌てて部屋の鍵を開けてくれたさ」

「え…?」

「脱出の為にひと芝居うっただけ。親切な彼は今ごろ部屋で横になっているよ」

 いやこの場合 軽率と言うべきか。シアンにまんまと騙された見張り人は気を失って倒れている。

 それを正直に聞かされたオメルは、何と返せばいいのかわからなかった。

「じゃあ僕は外に出るよ。他の人に見つかると面倒だから」

「まっ…待てよ!」

 わからないけれど咄嗟に呼び止める。

 このままシアンを行かせてしまったら、取り返しのつかない事になる気がした。

 それくらい今のシアンは様子がおかしかった。

 オメルを怯えさせないように温和に答えているが、言葉選びが投げやりで、目が冷めている。

 何かに怒っている?

 このまま行かせてしまったら……たぶんキミは、二度と戻ってきてくれない。


「あいつの…──スレマンさまのとこに、行くのか?」


「──…!気付いていたの?」


「うん……知ってた」


「そうか…」


 意外そうなシアンが、少し感心した様子で微笑んだ。


「いつも夜になるといなくなるシアンが、スレマンさまのとこに酒持って行ってるの…知ってたよ」

「誰かに後を付けられてる気はしていたけれど、君だったんだね」

「今日も、行くのか?」

「そうだよ。そしてここにはもう戻らない」

 淡々と答えるシアンは、やはり投げやりだ。

 オメルの言葉が途切れると、あっさりと見切りを付けて立ち去ろうとする。

「待てよ!やだよオレっ…シアンがあんな奴に好きかってにされるの、嫌だ!」

「……」

「バヤジットさまに守ってもらえばいいじゃん!喧嘩したなら謝ろうよ!あいつのとこ行くな…!!」

 背中を見せたシアンをオメルが引き止めた。

 スレマンの執務室で、毎夜何がおこなわれているのか

 それすらもオメルは知っているのだ。

 奴に身体を蹂躙され…汗を流してヨガり悶えるシアンの姿を、鍵穴の隙間から見てしまったから。


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