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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第24章 明かされる正体


“ そうだ、俺はあいつの上官なのに…… ”


 目の前の男を睨みながら、奥歯をぎりりと食い縛る。


“ 部下であるシアンを恐れて、突き放した ”


 シアンの言いぶんに耳を貸さず

 時間をかけてシアンの目的を知ろうともせず

 俺はただシアンを追い出そうとした……。

 陛下の安全の為などと、言い訳だ。

 自分の為だ。

 シアンの事で頭を悩ますのを放棄した──上官としてあるまじき選択。

 俺はあいつを裏切った。

 だから、シアンは俺から逃げた……!!


「……っ」

「バヤジット様…!?」

「俺は上官失格だ。貴様を責められた立場ではない」

 急に鎮まり独り言を始めたバヤジット。胸ぐらを掴まれている男はよけいに戸惑っている。

「不審な行動をとったあいつを……隊から追い出そうとしているからな」

「……!」

ドサッ

 衣を掴んでいた手をパッと離され

 男はその場に尻もちをついて倒れた。

 元副官に対して関心を失ったバヤジットは、相手に背を向けて立ち去ろうとする。



「──…不審な行動とは…あの者は何をしたのでしょうか」


「ん…?」


「盗みや売春ですか」


「貴様っ…まだシアンを侮辱しようというのか」


 食堂を出ようとするバヤジットを呼び止めるかたちで、今度は元副官のほうから問いかけた。


「そうではありません…っ。ただ、私にもひとつ、あの者に感じた違和感があり…。もしや、と」

「違和感…だと?」

「いえ…気に止めるまでもない馬鹿馬鹿しいモノですよ、ただ」

 酔いが少し冷めたのか、男は妙に深刻な顔をしてみせた。

 その変化を見抜いたバヤジットも、ガラリと表情を変えて冷静に向き直る。

「本当に…ふざけた違和感と思いますが」

「──構わない。話せ」

 元副官はバヤジットに話すために、過去を思い起こしていた。

 朝の訓練に参加していたあのクルバンを、自分に歯向かった罰として痛めつけようとした日である。

「あのネズミ…いや、シアンが入隊した翌日です。練兵所にて部下と手合わせをさせたのですが」

「手合わせだと?」

「入隊試験のようなもので……そ、その際にですね」

 男は慎重に言葉を選んだ。

 食堂にいる他の兵士には聞こえないよう、声をひそめ

 近付いたバヤジットにだけ恐る恐る話を続けた。


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