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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第24章 明かされる正体
「あの者が…… " 型 " を使ったのです 」
「──…?」
元副官は口の端を引き攣らせていた。自分の話しているコトの馬鹿馬鹿しさに笑いが抑えられないのだろう。
「終始、独特な戦い方をする奴でしてね。片腕ですし…それを庇うための戦法とも言える。しかし最後の…部下を負かした時のあの動き、あの構えに、奇妙なことに見覚えがありました」
「──…」
「あの動きは素人ではない。
…いや、素人の偶然か……?」
話しながら、よけいに混乱しているようにも見える。
「何を……見た?」
....
バヤジットは爪の先にいたるまで身体の全てを緊張させて耳を傾けた。
シアンのことになるときまって彼を襲う胸騒ぎが──
今も、うるさく心臓を叩く。
「あれ──奴の " あれ " は剣術だ…!しかも実戦で使えるようなまともな剣術ではなく」
「──…!!」
「あの型は──…そう、…まさに
…代々の王族に伝えられる古典剣術のひとつ」
元副官はそこまで話すと、急いで酒器をとって中を飲み干した。
そして不気味に笑い始める。
単なる私の思い過ごしだと
もはや冷静でいられないバヤジットに対して、深く考えてくれるなと助言を残した。
しかしどんな助言をしようとも後の祭り──
腹の底にのしかかる緊張と混乱で、バヤジットの心は弾力を失っている。
彼は無言で、宿舎を出た。