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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第24章 明かされる正体
《 あらゆる不条理に殺(あや)められし者よ 》
《 私は汝(なんじ)の過去を知っている 》
血相を変えたバヤジットが向かう先は、偶然にも、つい先ほど彼が出向いた場所と同じ方角である。
「はぁっ!…はぁっ!…はぁっ!」
無我夢中でバヤジットは走っていた。
《 長年にわたり汝の立場を脅かし、側近の者共を操り、陛下との仲を引き裂くように仕向けたばかりか── 》
前方に練兵所の広場
右手に近衛宿舎
彼が向かったのは、司令部だった。
《 偽の書状で汝を王の寝室に誘い出し、陛下の暗殺という虚偽の罪を被らせた
──ラティーク・タラン・ウル ヴェジール 》
《 さらに奴の指示で王室の警備兵を殺し、あたかも汝の仕業であるかのように偽装した
──ハムクール・スレマン・バシュ 》
司令部の通路を奥へ進み、目的の部屋の前でバヤジットが叫んだ。
「スレマン・バシュ!此処へいらっしゃるか!?スレマン・バシュ!」
室内から返事は無い。
バヤジットは手筒を握りしめたまま拳を握り、殴りつけるように戸を叩いた。
「返事をなされよ!!」
それでも返事は無かったが
バヤジットは確実に中に人の気配を感じてそのまま叫び続けていた。