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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第25章 甘い毒
「…何をしに来た」
早朝の議会にて王宮警備兵に任命されたシアンは、その足でバヤジットの邸宅に赴いた。
「忘れ物を引き取りに伺いました」
待ち構えていたバヤジットと相対するも、今のシアンは堂々と振る舞う。
バヤジットの部下という立場から飛び出した彼は、もはやバヤジットの権限で追い出すことができないのだから。
「…動揺していますね」
「……っ」
「あの日──貴方がスレマン様の執務室に乗り込んで来た時も、そのような目で僕を見ていた」
シアンは以前彼が寝泊まりしていた部屋に行き、寝台の上にほうった荷を手に取った。
少ない持ち物が入ったそれの中を確認するために、袋の口を開く。
「──…?」
アレ が無くなっている
気のせいか……?
「探し物は……コレだろうな」
「その紙は──…、そう、か。貴方はそれを読まれたのですね」
荷をのぞくシアンにバヤジットが差し出したのは、ぐしゃぐしゃに握りつぶされた痕跡の残る紙切れだった。
「フ……それで、その目か」
「……っ」
「貴方が怯える理由を把握しました」
その紙切れが例の推薦状であると理解したシアンは、差し出すバヤジットの目を見つめて笑う。
紙を持つ手に視線を落とせば、大きく男らしい手の、指の先が震えていた。
「僕に返してくれるのですか?その推薦状はすでに役目を終えた物ですし、貴方に差し上げますよ」
シアンはそれを受け取らず、荷袋だけ抱えて立ち去ろうとする。
「待て!シア──ッ」
「…なにか?」
「……っ、コレは、ここに記された事が偽りで無いならっ…あ、" 貴方は " ……!!」
自分から彼を呼び止めるくせに、言葉を詰まらせるのもまた…バヤジットのほうだった。
「バヤジット様」
そんなバヤジットがおかしなコトを口走るより先に、シアンの声が念を押す──。