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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第25章 甘い毒
「スレマン様を廃人同様に堕としたのは、僕の毒──。すべて僕が仕組んだコトです。……残念ながら」
「スレマン・バシュにっ…毒を飲ませたのか?伯爵家の人間にそんな真似をしてはただですまん!医官が気付けば真っ先に疑われて捕まるぞ…っ」
「フフ、…ええそうですね。医官が気付けばの話ですが」
恐る恐る顔を上げれば、シアンの顔がすぐ横に。
至近距離で目が合ったまま……背に置かれた義手の手がバヤジットの肩をなぞって離れる。
「僕の " 毒 " は特別な物ではありません。どこの貴族も毎夜のように飲んでいるから」
「毎夜のように……?そんな毒がどこに──…!?」
「宿舎の食堂にいけばいつでも飲めますよ」
「…!? まさかその毒──" 酒 " だと言うのか?」
「ええ」
「ではスレマン・バシュは酔っているだけだと?それならとっくに正気に戻っている筈だろう!」
「ところが二度と正気には戻らないのです、バヤジット様」
「何故だ…!!」
「……わかりやすく、西方諸国の話をしましょうか」
理解がおよばないバヤジットへ、シアンはゆったりと語り始めた。
「ブドウの産地である西の大国では、キサラジャとは比にならない量の酒が消費されています。それこそ王族は " 浴びるように " 水の代わりに酒をたしなむ」
「それがなんだ…!!」
「噂に聞いた事はないですか?西の大国の王達は、たとえ才知に優れた名君であろうと、歳をとるにつれ残忍な嗜好を持つようになり……多くが暴君になり果てると。
──その原因が酒だとしたら?」
「…っ…そんなわけがない。西国の王達はっ…それが彼らの本性であったというだけの話。スレマン・バシュの乱心とは関係ない!」
「いいえ無関係ではありません。このありふれた酒という飲み物には、人の精神を蝕む有害なモノが含まれている」
「……!なんだ、それは……」