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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第27章 散花無惨 (チルハナ ムザン)

「…ハァ‥‥ハァ‥‥!!」

「薄気味悪いヤツだ…!」

「そ‥…こまで自信たっぷりに吠える なら…‥ッ…ナニカ、証拠があるのでしょうね‥‥…!?」

「証拠だと?」

 三人がかりでシアンをいたぶる男達に向けて、挑発を続ける。

「証拠もなしにベイオルク(王宮警備兵)を罰してみろッ……、後で必ず、追及を、受けますよ…‥っ」

「証拠……」

「…‥ッ‥‥" 毒 " というのも憶測でしょう…!? 本当は何も突き止めていないのでは……!?」

「証拠…───、くくく」

「…?」

「ははは!残念だったな悪党!証拠はあるんだよ」

「…!?」



「阿芙蓉(アフィヨン)だ」



 男のひとりが勝ち誇った顔で口にする。

 シアンは痛みで閉じかけていた上瞼をピクリと動かした。


「な んだと」

「医官にみせたと言っただろう?スレマン様の体内から毒の反応があったんだ──… 阿芙蓉(アフィヨン)という劇薬のな!」

「そんな筈が…ッ」

 男のひとりがシアンの前にしゃがみ、彼の前髪を掴んで顔を近付けてくる。

 相手を睨むのも忘れたシアンは困惑を隠せないようだった。

「阿芙蓉っていえば百年前に小国ひとつを滅ぼしたとも言われてる。こいつを過剰に服用したら一時は天にも昇る心地らしいが?アタマをやられて廃人になるという危ない薬だ」

「‥‥‥!!」

 得意に語る男の話は本当だ。わざわざ説明されずとも大概の人間が知っている。

 勿論シアンも、阿芙蓉の過剰摂取の危険性は承知だ。だからこそ利用するわけがなかった。

 当然だろう?

 そんなモノを使えば毒を盛ったと一目瞭然。真っ先に疑われるのはシアンなのだから。

「医官にっ…会わせてください…‥!これは何かの間違いです」

「なンだその慌てようは…。さっさと罪を認めたらどうだ」

「…ち‥がう、僕ではない、阿芙蓉など…‥‥そんな、いったい誰が…──ッ」


 誰が──!

 髪を引っ張られ無理やり顔を上げさせられている中、シアンは目の前で尋問を続ける男のことなどどうでもよくなり

 男の奥に透ける黒い影に……

 顔も名も知らぬ黒い影に狼狽え、目を見張った。


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