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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第27章 散花無惨 (チルハナ ムザン)
「…っ…まずいな近衛兵に見られた!」
「いやしかしこいつは…──!?」
オメルが現れたので男達は焦りだした。だがすぐにオメルが正式な近衛兵ではないことを見破る。
「そうだ焦るな!たしかこの小僧はクルバンだ」
「…!?…だったらこいつら仲間か」
「面倒だな…捕まえろ!」
三人は貯蔵庫に入ってきた彼を取り囲み、小柄な身体を押さえつける。
「シアン…っ」
オメルがシアンに手を伸ばした。
だが手足を縛られたシアンは身動きがとれず、差し出された手を掴むこともできず、この急展開に状況を把握することもできない。
「…オメル‥‥ッッ…‥何して るんだ‥‥」
「大丈夫かシアン!?」
「何故君が‥…!?…‥え?‥…なんだ?どういう…ことだい?」
珍しく混乱したまま話すシアン。
彼が何もできない間に、オメルは男達に捕らえられた。
「がはぁっ!」
「いったん大人しくさせるぞ。押さえていろ」
二人がかりで両側から拘束されたオメルに、拳が襲う。
「この悪党を助けにきたつもりか知らんが残念だったな?」
「‥ぅ‥ッ──ち、がう…‥シアンは違う…なにも悪いことしてない!」
「うるさい黙れ!」
「─‥ッぐああ!」
オメルの悲鳴が貯蔵庫に響いた。刀を抜いた男が彼の足を斬り付けたのだ。
「オメルー!!」
「ハァッ‥!!…ハァッ‥!!‥ああ゛…!!」
足を斬られたオメルは立っていられなくなり
両脇の男らが手を離すと、あっけなく床に倒れた。
ドサッ‥‥‥!
「先に殺しておくか」
「それは問題じゃないか?俺たちが命じられたのは犯人の始末だ。もしおおやけになったら…」
「ふん…クルバンごときが消えたところで大した捜索はされんだろう」
男は倒れたオメルに対して、冷酷に刀を振りかざす。
「やめろ‥──!」
止めようと声を張り上げたシアン。
「やめろっ…‥やめて‥くれ……!! 彼に、手を出すな……!!」
ほどけるわけが無いのに、背中で縛られた手首をバタつかせる。
「シアン…」
必死なシアンを視界にいれたオメルは、ポロポロと涙を零す顔で
──無理やり笑顔を作った。
「これ」
「……!?」
「これが、証拠だ……オレがやった証拠」
オメルは床に崩れたまま、懐から包みを取り出した。