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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第27章 散花無惨 (チルハナ ムザン)

 彼の掌におさまるくらいの包み紙は、細い紐で口をきゅっと縛られている。

 シアンは それ に覚えがあった。

「これ を…‥スレマンさまの酒にいれた…!」

「……!! 小僧……まさかその中身」

「へっ‥‥あんたらが言ってた薬だろ?」

 阿芙蓉(アフィヨン)だ。

 オメルが持つ包み紙は──もともとシアンの持ち物だった、のに

 今はそれがオメルの手にある。

「酒飲みすぎてスレマンさまが部屋で吐いたから…掃除しに行けって命令されて行ったんだ…。そのとき置いてあった酒にいれた。……でもシアンが持ってきたのとは別の酒にだ!」

「……!?」

「シアンはいっつも厨房のお酒あっためて、スレマンさまに運んでた‥‥!! いつも同じ入れ物に入れてたから、ハァ‥‥ッ…‥どんな入れ物かは他の隊員も知ってる!オレがいれたのとは違うやつだよ」

「…ふざけるなっ!そんな都合のいい話があってたまるか」

「調べたらすぐわかる」

「ち…っ」

 オメルは男達を睨みあげ、恐怖をものともせず堂々と話した。

 男は振り上げた腕をそのままにオメルの自白を聞いている。

「その自白(じはく)が何を意味するか──わかったうえでほざいてるのだろうな?」

「意味もなにもホントのこと 言っただけだ……!!」

「……!」

 オメルの鬼気迫る表情を見てたじろいだ男は、頭上に上げた湾曲刀を、ゆっくりと…下ろした。



 その男はシアンに向き直る。

「小僧の言葉は真実か?」

「ハァ…ハァ…!!」

「答えろ!スレマン様に毒を盛ったのは小僧で、貴様は本当に無関係なのか?」

 問われるシアンは

 ……何も返すことができなかった。

 認めれば自分は助かるかもしれない。
 そう、自分 だけ は。


「答えんか……ふん、まぁよい。どうせ貴様の口先だけの詭弁(きべん)など当てにならん」


カラン──ッ


「その手で証明しろ」

「──…!」

「…わかるな?小僧の仲間でないというなら行動で示せ。俺たちは外に出てやるが待つのは400セクンダだ。それより待たせるようなら両方共…──いいな?」


 そう言い男は湾曲刀を足元に捨てた。

 目配せされた残りの二人がシアンの手足の拘束を解き、シアンの返事も待たず、彼等は貯蔵庫の外へと立ち去ったのだ。





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