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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第27章 散花無惨 (チルハナ ムザン)
残されたのは傷だらけのシアンとオメル
そして、外で舞う砂音が聞こえるほどの…異様な沈黙がものがたる絶望だった。
「……ご……めん、シアン‥…」
「……」
少し経って、床にうずくまるオメルが声を出した。
「オレのせい でシアンがこんなめに…っ、ごめん、オレ、ほんと に馬鹿で」
足を斬られたオメルはその場から動けない。
無言のシアンは片手を地につけて、グラグラと揺れる身体をなんとか起こした。
殴られ、蹴られた全身が骨の奥まで痛む。そんな状態で立ち上がり、オメルのところまで歩いた。
シアンはオメルの肩に手を添え、うずくまる彼を丁寧に起こす。そして彼の身体を抱きしめるように抱え、壁際まで運んだ。
その間にもオメルは泣きながら話していた。
「シアンの邪魔したくなかったよ……でもさぁ……どーしても我慢できなかった、あいつがシアンに酷いコトするの、嫌……だったんだ」
「……」
「だからっ…眠っちゃえばいいと思って…!! あいつが眠れば、シアンは傷付けられない と思って……!!」
──
『 眠れない夜にときどき飲むんだ。この薬は痛み止めにもなるし、それに睡眠薬にもなるから…便利だよ 』
『 眠くなるの? 』
『 そう、ぐっすり眠れる 』
昔、オメルにそう教えたのはシアンだ。
オメルにとってあの薬はただの眠り薬だった。
だからスレマン伯爵が錯乱してバシュ降格になったと知った日、誰よりも混乱したのはオメルだったのだ。
こんなつもりでは無かった。
こんなつもりじゃあ……!
「こんな怖いことになるなんて知らなかったんだ……!! 結局シアンが疑われて、殴られて……馬鹿だわ……オレ……」
「…………そうだね」
オメルを壁際に運んだシアンは、壁に寄りかかるように彼を座らせた。