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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第27章 散花無惨 (チルハナ ムザン)
自分の腰布をほどき、怪我をしている足に巻いて、出血を止めるためにキツめに縛った。
「い……ッ」
「痛いだろうけど…ッ…我慢、して」
苦い薬を無理に飲ませたあの日と同じように、シアンはオメルを励ました。
「バヤジット将官の屋敷に荷物をとりに行った時…──阿芙蓉が無くなっているのは気付いていた。気のせいだろうとっ…気に止めていなかったけれど…君が持っていたんだね」
「…っ…うん」
「……返してくれる?」
「うん……、返す、よ」
傷の応急処置を終え、シアンが右手を差し出す。
オメルはそこに阿芙蓉の包み紙を置いた。
「口紐をほどいて」
「…?わかっ た」
そしてシアンに言われるまま包みの口を開く。
中には白い粉が入っていて、シアンはそれをオメルの口に近付けた。
「オメル……これはね、そんな恐ろしい薬じゃないんだよ」
「え?」
「言ったろう?これは眠れない時に飲むもので、…それに痛み止めにもなるって。スレマン様の件とは無関係だ…」
「……」
「だから安心して、ゆっくり…吸い込んで。水が無いから飲みにくいけど、頑張って、飲むん だ」
「…………うん」
口元に差し出された阿芙蓉にそっと唇を付ける。
オメルが吸うと粉はあたりにふわりと舞い、当たり前だが、粉を吸い込んだオメルはすぐに顔をそらして咳き込んだ。
「頑張って」
シアンは柔らかな声で……だが次を吸い込むよううながし続ける。
義手の左手をオメルの黒髪に添えて、とかすように…優しくあやした。
「…シ…アン…、オレ‥もういいよ…」
「──…、そうか」
何度も咳き込んで、少しずつ少しずつ吸い込んで、残りが少なくなった時
オメルがそう告げたので、シアンは包み紙を彼の口から離した。