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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第28章 引き返せぬ運命
硬直したバヤジットをよそに四方を見渡すシアンは、寝台の足元にオメルの荷物を見付け、そこへ歩いた。
いつの物かわからないピタ(乾燥パン)や木の実が溜め込まれたその中から、あの日オメルが見せてくれた古びた本を取り出す。
ボロボロの黄表紙に、他国の言葉で記された本。そのページの途中に貼り付いた──…小さな白色の花びら。
本を手に腰を上げたシアンは
それをバヤジットへと差し出した。
「…?それはオメルの持ち物だろう?本、か…?」
「これを代わりに供養してやってください」
「なんの事だ…ッ…」
「遺体はとられてしまいました。…十中八九ゴミ同然に捨てられるでしょう。だがそんな事は許されません。どうかバヤジット様の手で……どうか、神聖な葬儀で……彼を陽の国に送り出してくださいませんか」
「‥‥‥!?」
「賤人である彼の葬儀をっ…貴族の貴方に頼むなどふざけている、論外だ、それは承知しております。しかし…ッ…今の僕には貴方しか…」
「…葬儀…だと…!!…オメルが?何故だ……何が……起こった」
「……ッ」
バヤジットに問いを返されたシアンは、本を床に置き、自らもそこに跪いた。
そして混乱するバヤジットの足元で、深々と座礼をおこなったのだ。
「貴方へ対する数々の無礼…今だけ、お許し頂きたい…!どうかこれだけは頼まれて欲しいのです」
「冗談ではないのか…!?」
「はい」
「…ッッ──待てシアン!」
懇願の座礼をしたシアンは、本を置き去りバヤジットの横をかいくぐった。
逃げるように駆け足になる。
バヤジットは後を追った。