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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第29章 地下の陰謀
「──…、…くそっ、いつまでこンなとこで働かされんだオレらは」
「バカ野郎!聞かれるぞ」
声のする方には、ひとつの燭台が──
角を曲がれば、その先の壁にも複数の明かりが灯っていた。
声の主たちは小汚い格好をした男ふたりで、身を潜ませるシアンに気づかず前を通り過ぎる。
ひとりは大きな籠を持ち、置き場に困って地下道をうろついていたが、適当な場所を見つけて籠を置いたのだろう。手ぶらになって来た道を戻っていく。
「……」
足音を忍ばせたシアンが男達の後を追うと、その先の地下道は明らかに人が住み着いている痕跡があった。
貯蔵庫らしき大きな窪みには大量のピタ(乾燥したパン)が保管されていたし、ところどころに水瓶もある。
寝床と思われる場所もあった。
光の届かないこの地底空間に、何者かの命令で人々が集められているのだ。
やはり ここ は
予想通り──
「───止まりたまえ」
「……!」
しかし、地下道を探るシアンが壁の燭台を手に取って細工をほどこしていたその時
突然、背後に刀を突きつけられた。
「……ッ」
彼の細首をはさんで左右に、刀の切っ先があてられる。
シアンは咄嗟に燭台を捨て、両手を上げた。
「腕を後ろに回せ」
大人しく命令通りにすると、首にあてがわれた刀はそのまま、別の手がシアンの右腕を義手ごと縛り上げた。
「…っ」
「まさかこんな所まで潜り込もうとはな」
腕を縛られたシアンは腰の刀を取り上げられ、肩を掴まれて身体の向きを変えさせられる。
彼を捕らえたのは三人の王宮警備兵と、そして振り返ったそこに立っていたラティーク・タラン・ウル ヴェジール。
「此処に何の用かね」
「タラン侍従長様……」
シアンは捕らえられても慌てる素振りがなく、しおらしい声でタランを呼んだ。
「ふっ、さすがの態度だ、王宮警備兵(ベイオルク)殿」
「……」
「いやこうお呼びするべきかな?
敬愛なる王弟殿下…───!」
シアンが目を細める。
勝ち誇って笑うタラン侍従長は、部下に命じて彼を地下道の奥まで運ばせた。
───