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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第30章 捨て置いたモノ

「──…さて、拷問の時間だ」

 話が終わりタラン侍従長が片手で合図を送ると、後ろに控えていた王宮警備兵の男ふたりが牢に入った。

「全て引き剥がせ」

「は!」

 男達はシアンを牢の中心へ引ったて、かろうじて残っていた衣服の残骸を奪っていく。

ビリ!ビリ ビリ!

 左の義手を残し丸裸にされたシアンは、うつ伏せで転がされた。

「侍従長様!やはり書状は見当たりません」

「そのようだな。続けろ」

 晒された肌を、男の持つ鞭が襲う。

 鞣(なめ)された皮を使ったその鞭は、細くなるよう編みこまれ、よって受ける痛みも強い。

「‥…ッ‥!!」

 シアンが喉の奥で呻いた。



「死ぬ前に教えろ…──ハナム王妃に渡された書状はどこだ?」

「ハァッ‥ハァッ‥」

「近衛兵宿舎で貴様の部屋の中を探させたが、それらしき物は出なかった。今も持っていないとなると…何処かへ隠したな」

「…‥そ‥…んな物‥‥僕は、知らない」

「嘘は良くない」

「‥ぅあ゛!!」

 タランが顎をしゃくると、また鞭が飛んだ。

 打たれた箇所は赤色に浮き上がる。シアンの肌に蛇のような模様を刻んだ。

「王妃との密会現場は見張らせていたと伝えたろう…。そこで貴様が受け取ったもの。九年前に貴様を陛下の寝室へ呼び寄せた物だ。素直に吐くが賢明だぞ?」

「……っ……罪を認めるおつもりか」

「それ以前の問題だ。ハナム王妃の思惑が何であれ…私の足枷になりようものなら早めに詰んでおく」

「貴方ともあろう人が…余裕が…無いですね」

「そうか?そうやもしれぬな……ククク」

シュッ─バシ!

バシ!

「ぐァ‥!!」

「私はこれでも動揺しているのだ……!殺したハズの王弟殿下が、のこのこと戻ってきたと知り」

「ハァハァ‥‥ッ‥‥!?」

「今日は一日反省したとも。あの近衛兵──バヤジットが " 指 " のひとつを切り落として戻った時、すぐにでも追手をかけるべきであった。どうせ野垂れ死ぬと見誤った…私のミスだ」


“ 初めの五年間…音沙汰がなかったため、やはり王弟は死んだのだと見誤った ”

“ 仮に生き長らえたとして、なんの脅威にもなり得ぬ小僧だと、見誤った ”

“ 命の危険を犯してまで王都に戻るはずが無いと、見誤った… ”



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