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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第30章 捨て置いたモノ
「なん だ……貴様……!!」
「はは‥‥ッ、‥‥ハッ」
ひとしきり笑い飛ばし…口から血の塊を吐き出したシアンは、さも可笑しそうに、嬉々とした目で男を見上げた。
「…ッ…あなたが言う " 薬 " 、…僕は…よぉく…知っています よ」
「……!?」
「昔 娼館で同じようなモノを見た。それはそれは…高価な 薬で ね、……ふふ、女将に取り入って…手に入れるのに、苦労…しました…」
「まさ か‥‥、自ら‥‥!?」
「なのに………なんだ………
あんな苦労、する必要がなかったらしい」
馬鹿馬鹿しい。腹の底から……馬鹿馬鹿しい。
男でもなく女ですらない
だからどうした?それを嘆くのがせめてもの……
" 人 " が持つべき矜持(きょうじ)なのか?
そんなモノは、とうの昔に捨て置いた。
そうでなければ…ただ客ウケが良いからと、自ら子種を殺したものか。
かつての彼がその選択をするのに、躊躇(ちゅうちょ)は無かったと言い切れる。
いったい……どこまで
どこまで堕ちれば気が済むのか
「‥‥貴方にも‥‥いらぬ苦労を‥‥かけました ね 」
「…っ…何が可笑しい!…貴様っ貴様!貴様あ!」
嘘のない狂った笑顔を魅せるシアンに、タランは確実に怯えていた。
得体の知れない──
理解のしようがない
だから恐ろしいのだ。
「ふざけたコトを口走りおって…!! 何にそれほど笑っている??貴様は何を考えている!」
シアンの髪を掴む手も、すぐに振り払う。
けれど今度は──シアンも顔を下げない。男を睨む視線をそらさない。
「忌まわしい…!穢らわしい小僧め…!」
「じ、侍従長様!落ち着かれてくださいっ」
「黙れ!」
取り乱すタランを手下が心配するが止められるわけもなかった。
逆上を強めたタランは、勢いよく立ち上がり、手下のひとりに命令した。
「 " 例の物 " を連れて来い…牢の中へ運べ!」
「侍従長様…っ…本気で御座いますか? アレはあまりに…!!」
「行け、今すぐにだ」
「か、かしこまりました」
シアンを鞭打っていた片方の男が、躊躇いがちに牢を去る。
…そしてすぐに、控えていた ソレを連れて牢の前に戻ってきた。