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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第31章 鳴り止まない声
「……最後の問いだ。お前が地下へ来た時期と、他の平民の人数を教えろ」
「時期ぃ?…た、しか、四ヶ月前か…もっと前か?…そんくらいです。他の奴らも全員は知りぁせんが、初めは200人近くいましたぜ。事故やら病気やらでどんどん減ってったけどよ…」
「そうかわかった」
それなら、ウッダ村の民兵の徴用時期と重なる。それに二百人という数も、徴税記録から調べた近隣の行方不明者数と大きく違わない。
彼等は、タラン侍従長によって秘密裏に集められた平民達だ。
バヤジットは男に灯りを手渡す。
「お前は外に出ろ!道が分かれたら俺が残した印を辿れ。床に…こう…こういう印だ、わかったな?」
「はい!ありがとうございます貴様さま!」
「それとだ。他の者への目印として正しい道にコレを落とせ、必ずだ」
彼は隊服のポケットから予備の光油(カンデラ)をひとつ取り、それに火をともして壁際に置いた。
「火をつければしばらく燃え続ける。お前にいくつか渡す。わかったな!?」
「わっわかりやしたあ!!」
すぐさま走って角を曲がった男を見送り、予備の灯りを手にしたバヤジットは、男が来た方へ足跡を辿った。
“ この先に探していた平民達がいるのか……!大勢が迷路を逃げ回っているとなると、全員を出口へ連れ出すのは難しいぞ ”
再び分かれ道にぶち当たったバヤジットが考え込む。帰り道の方向に光油(カンデラ)を置き、今からでも部下を動員するべきかと悩んでいると…
「おわっ!」
「誰だよそこにいンのは!」
「…っ」
また別の男が走ってきてバヤジットとぶつかった。今度は二人組だ。
「あっ貴族!貴族さんだな!? オレを外に出してくれ助けてくれ!」
「道がわからねぇんだ教えてくれ!」
「…っ…わかっているから落ち着け!」
この二人も、先程の男と同じ反応だ。
慌てる彼等を押さえつけ、同じように説明してやる。
「…じゃあその灯りを追えば外に出れるってことっすね?」
「助かった!さっさと逃げるぞ!」
───カランッ
「──ん?おい」
外へと向かった男達とすれ違ったはずみで、何かが床に落ちる。
踏んだ感触は……固くて、丸い。