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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第31章 鳴り止まない声
“ 宝玉…か?平民の持ち物にしては妙だな… ”
膝をついて拾ったそれを指にはさみ、灯りに近付ける。そしてバヤジットは目を見開いた。
「これは頭布留め……!?」
二人組が落としていったそれは頭布(ターバン)留め。しかもその装飾は、他ならぬシアンの物だった──。
「お前っこれを何処で手に入れた!」
バヤジットは即座に声を張り上げる。
「これの持ち主はどうした!?白い肌と髪の若い男だ!」
「 白い肌と髪?──ってあの、" 犬とヤッてる " っていうキチガイか?俺はナンも知らねえですよ!」
「‥‥!?」
だが男達はてきとうな返答のみで、角を曲がり見えなくなってしまった。
“ 何故こんな場所にシアンの持ち物が…っ ”
昨夜
昨夜のシアンはまだコレを身に付けていた。
奪われたのならそれ以降ということになる。
「シアン!!ここにいるのか!?」
冷や汗を浮かべバヤジットが叫ぶ。だが、自身の声が反響するばかりで返事は無い。
“ いったいどういうことなんだ…!! ”
バヤジットにできるのは先に進むことだけだった。
逃げてきた平民の足跡をヒントに迷路を辿っていくことだけ。
「シアン!シアン!返事をしてくれ!」
その後も何度か、バヤジットは逃げ回る平民に地下からの脱出をうながし、そして、自分自身は反対側に進んでいく。
奥へ、奥へと
返事のない暗闇の中、何度も彼を呼び続けた。
──