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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第31章 鳴り止まない声



──



《 ──シアン!》




……………




「‥‥‥‥ッ‥‥」



 ピクリと

 床に投げ出したシアンの指が動く。



「‥‥? 」


 幻聴か……

 自らの名を呼ぶバヤジットの声を、シアンの耳が微かにとらえた。


「‥‥‥‥、フッ」


 思わず鼻で笑う。

 情けない

 いったい何を期待しているのだと……シアンは自分自身を軽蔑した。

 いるはずの無い男の声だ。

 完璧に突き放した……。自分を追ってこんなトコロまで来るはずが無いのだ。




「ハァ‥‥‥ッ‥、ハァ‥‥‥‥!」

 発情した犬は、その有り余る精をもてあそび、いまだにシアンを犯していた。

 タラン侍従長達はとっくにいなくなっている。

 少し前まで牢の向こうから陵辱ショーを愉しんでいた連中も、今は混乱して地下を逃げ回っているところだ。

 立て続けに壁の燭台が暴発し、爆薬貯蔵庫にまで飛び火したことで、地下の密造所は一瞬でパニックにおちいったのだ。

ガルルッ、ガルルッ

「‥‥カ ハ…ッ‥‥ハァっ‥‥ハ ァ‥!」

 放精した後 尻合わせ の格好でしばらく繋がっていた猟犬は、いったん陰茎をぬいた後、また馬乗りになってシアンの後孔に突き立ててきた。

 普通の犬ならとっくに満足したろうが

 ヤク漬けで強制発情させられているからか、体力も精力も尽きることがない。

 けれどシアンはとっくに限界だった。

 もともとボロボロの状態だった。弱点の肉壁を…加減知らずの獣の突き上げでゴリゴリと責められ、背筋も脳も焼ききれそうだ。


《 シアン!返事をしてくれ! 》


「ハァ‥ッ‥‥ハァ…ッ‥‥」


 霞む意識の中にまた……バヤジットの声が響く。

 うるさい声だ

 人がせっかく……終わりを迎える直前の、最も倒錯した快楽に身をゆだねようとしている時に……

 抱えすぎた重圧から、やっと解放されようとしている時に……

 貴方の声はとにかく豪快で無遠慮で

 いつも一途で、実直で

 いつも、いつも



 
 僕に呪いを、かけるばかりだ




《 ──…生きてね、シアン 》



「‥‥‥!」


 ふいに、バヤジットとは別の声の
 また別の " 呪いの言葉 " が

 シアンの脳裏に囁いた。



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