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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第32章 焦がれる身体
「‥‥‥‥‥バ シュ?」
「…!そうだ俺だ!わかるか?」
「フッ‥‥‥‥、ぇ‥ぇ」
ひくりと動いた片頬が、ほくそ笑んだ。
ほんの少し開いただけの視界は、バヤジットの顔もまともに見れなかったが…
声でわかる。……貴方だ。
力強く、それでいて、壊れ物を扱うように慎重に抱き締めてくる太い腕。……これも貴方だ。
こんな場所まで自分を探しに来る変わり者がいったいどこの誰だかなんて、シアンにとっては簡単すぎる人当てゲームだ。
…だが、「どうして来たのか?」と
そのくらいは…聞きたくもなる
「‥な‥ぜ…‥?‥‥ここ、‥‥に」
「ああいや!いい!話しかけて悪かったっ…もう喋るな、急いで外へ出るぞ」
けれどバヤジットはそこで彼を黙らせた。悠長に話してはいられんと、すぐさまシアンを抱き上げる。
グラッ・・・
「く……!?」
しかし牢の格子をくぐったところで、バヤジットが片膝をつく。シアンを見つけるまで自分で気付いていなかったが、身体に力が入らなくなってきている。
” 煙を……吸いすぎた……か……!? “
「…っ…ふざけるな」
誰に対してかわからない悪態──。
バヤジットは再び腰をあげ、歩みを進めた。
「ふざけるなっ……必ずっ……助ける」
「──……」
地下牢からシアンを連れ出し、来た道をたどって外を目指した。