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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第33章 復讐者の記録──肆
『 気にしてくれるわけだ? 』
『 気にされたくないのなら、こんなものっ…部屋に残さないでください、気味が悪い 』
ヤンにむけて青年がほうったのは、切り落とされた彼の三つ編みだった。
投げられた髪が彼の足元に落ちて砂が舞う。
ヤンは不服な顔で声をおどけさせた。
『 おい捨てるなよ…丁重(ていちょう)に扱え。こういう未練がましい遊女みたいな形見(いやがらせ)、一度してみたかったんだ。なかなかいいだろう? 』
『 気 味 が 悪 い、と言っています 』
『 呪われそうで? 』
『 そのうち動いて首を絞め殺されそうで 』
『 ハハッ、そりゃあ実に重たい愛だ、羨ましいね 』
『 …これ以上はぐらかすなら、部屋に戻りますが 』
『 ──… 』
真剣な様子の青年に対して、ヤンはふざけて笑うのをやめた。代わりに浮かべた微笑みは、二十三という年齢特有の色気をダダ漏らせて、青年へと向けられた。
『 教えてほしければ……着いてこい。ここじゃあ話せない 』
試す言葉を言われて、青年は眉をひそめる。
かつて少年だった彼も、今では齢(よわい)十七のギョルグの男娼。その儚い美貌と床(とこ)での性技は客達の間ですっかり広まり、この街では有名だ。
人目がある場所では騒ぎになる…
彼は仕方なく、ヤンについて行くことにした。