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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第33章 復讐者の記録──肆
自らの境遇に絶望した筈だ。
しかし太子はそうではなかった。
彼は生き延びるコトを選んだ。
生き延びてさえいれば、それを祖国に伝えさえすれば、反乱分子が必ず自分を利用する為に会いに来る。
その時こそ兵をあげ、奴を殺しに戻るのだ。
太子は娼館で着実に客をとりこみ、そして街一番の男娼として名をあげた。
男を魅了する《気まぐれ姫》の名は商人の間で噂となり、その話は帝国にまで持ち込まれる。これが武人の名であったなら敵にも警戒されたであろうが…色を売る賤人の存在など、どれだけ有名になったところで奴の眼中に無いわけだ。
──そして計画は成功した。
現皇帝を討つために必要な臣下と兵が、こうしてヤンのもとに集まったのだ。
『 奴は……皇帝の弟という立場でありながら我が父を謀殺し、帝の地位を簒奪(さんだつ)した 』
『 ……! 』
『 欲に目が眩んだバカな豚に、俺が引導を渡してやる。死にたくなるほどの苦痛と悪夢を喰らわせて……破裂するまで遊んでやるよ 』
禍々しいほどの狂気
幼子のように純粋な、鋭い殺意
ヤンの美しい表情に……青年は見惚れた。