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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第33章 復讐者の記録──肆
『 お前も俺と来い、シアン 』
『 …は? 』
そんな時、また前置きのない事を言ってヤンが青年を驚かせた。
言葉はキサラジャのものに戻っていたから、何を言ったのか聞き取れない臣下達が戸惑っている。
『 …何故ですか 』
戸惑うのは青年も同じだ。
『 俺の提案に深い意味があると思うのか? お前は面白いから気に入ってる、一緒に来いよ 』
『 こんな時に冗談はやめてください 』
『 冗談じゃあない 』
『 …っ 』
ヤンが青年に近付く。
立ち尽くす青年の顎をすくい、妖しく笑いながら唇を重ねてきた。
これをされると蛇に絡みつかれたように身動きが取れなくなる。長年にわたりヤンに調教されてきた彼の身体はそのようになっていた。
侵入してくる長い舌。それが彼の舌裏を…輪郭を辿って舐め上げ、震えたところを吸い上げてくる。腰から背にかけてぞくぞくと震えは走り抜け、体内が熱を灯してしまう。
『 …‥国へ 戻れば………お前を…寵妃として傍においてやろう…… 』
『‥…っ‥‥‥!! 』
『 クク……ここよりずっと贅のある暮らしを……、約束するぞ?どうだ? 』
唾液を交換するそのあわいで甘言を囁く低く艶っぽい声。
ヤンの舌戯に遊ばれながら…翻弄されつつ青年は理解していた。
ヤンの誘いを受けるか、断るか
ここで自分の生死は左右されているのだと。
間違えばヤンは躊躇なく自分を殺す。だからこれだけ大事な秘密を、ペラペラと説明できたのだ。本来なら他言できる話じゃない。
『 …はぁっ‥はぁ…‥ヤ、ン… 』
『 …… 』
この気まぐれな男の機嫌を少しでも損ねたら、今度こそ彼は死ぬのだ。
『 …ッ‥断り、ます‥‥!! 』
『 …っ…あ? 』
──そこまでわかっていて青年は、ヤンの舌(さそい)を拒んだ。