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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第4章 掌握する者

 入った部屋は机といいカウンター付きの石の厨房といい…酒場にしか見えない。

 宿舎の一階にあるので食堂なのだろうが、健全な印象を受けないのは散らかった床のせいだ。

 奥の机にうつ伏せ、空の酒器(しゅき)を片手に眠っている兵士もいる。

「……」

 酒臭い……

「休息、には不向きな部屋のようですね」

「悪いが個室は全て埋まっているのだ。家なしのお前には、ここで寝泊まりしてもらう」

「そういう事なら、地下の牢をひとつお貸し頂ければ有り難いのですケド」

「我儘を言える立場か?」

「…っ」

 おどけた口調で軽く笑ったシアンの首を掴み、男が顔を寄せてきた。

 至近距離でシアンの顔を物色する。

「本当に上玉だなぁ。女でもこう綺麗な顔は見たことない」

「…ク…ッ──!!」

「おっ…と」

 無遠慮に掴んでいた手をシアンが払う。

 首をかばって何度か咳き込み、ふらふらと後ろに下がった。そして背後の机に乗り上げて腰を下ろした。

「なんだ反抗的だな。まだこの部屋が気に食わないと言うつもりか?」

「…ッ…ゴホッ ゴホッ!…確…かに、盗られて困るような物も…持ち歩いていませんし。個室でなくとも構いませんよ」

「ははは、安心しろ。お前の荷物になんぞ誰も興味ない。あるのは…!」

「ッ…──!」

 シアンの両肩を男が押さえ付け、体重をかけられたシアンは机の上に仰向けに倒れた。

「興味があるのは コッチ だけだ。なあ良いだろ?案内の礼に味見させろよ」

「…っ…強引ですね」

「はぁぁ…良い匂いまでしやがる…何の匂いだこれは?」

 いとも容易くシアンの衣服を剥ぎ取った男は首筋に顔を埋め、荒々しく息をする。

 将官と戯れる姿をただ見物させられ、我慢も限界だったのか。体温もやたらと高い。

 鼻息荒くシアンの上に被さってきた。


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