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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第33章 復讐者の記録──肆
歯を立ててきたのでヤンは舌を引っ込める。
顎をすくわれたまま…上気した顔で青年が答えた。
『 僕は…残ります。帝国に行ったところで、其処に僕の目的は存在しない…っ 』
『 ……なるほどね 』
拒まれたヤンの目が冷たくなる。
『 だが…お前にしては賢くないようだなシアン?共に来ないのであれば…俺の正体を知った自分は処分されると考えなかったか? 』
『 逃げますよ、たとえ貴方が相手でも 』
『 へぇ……? 』
『 無為に生きる時間は僕にない! 』
『 ─ッッ 』
その一瞬だった。
服の合わせ目に右手をいれた青年が、そこへ仕込んだ小さな刃を引き抜くと同時にヤンを切り付けた。
シュッ──という風切り音とともに、刃は真っ直ぐヤンの首を狙う。
即座に反応したヤンが、顎に添えていた手を使い刃の軌道をぎりぎりでずらした。
『 太子様!! 』
周囲の臣下達が血相を変えて走り寄る。
『 う゛‥‥!! 』
...ボダ
青年の凶器はヤンの首をそれ、左の顔に深々と傷を負わせていた。彼の面(おもて)は赤く染まり、大量の血が砂地に落ちる。
青年はトドメを刺すことより、逃げるのを優先した。
刃を捨て、街へ向かって脇目もふらず走り去る。
──ガツッ!
『 ──‥!! 』
だが背中を見せた直後に、臣下のひとりに横から頭を殴り倒された彼は、あっけなく意識を手放した──。