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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第33章 復讐者の記録──肆
──
──ガラガラガラ…
『 ……ッ…? 』
次に青年が目を開けた時──そう、青年はまだ殺されておらず、ナゼか再び目を覚ますに至った。
起きた場所が何処かというと、彼は揺れる荷馬車の中にいた。
『 よぉ…狂犬姫 』
『 ……!ヤン 』
そして同じ馬車にはヤンも座っていた。荷が積まれていない馬車の中で、絨毯を敷いた上で足を崩している。
『 可愛い寝顔だった……と言いたいが、今ばかりはズタズタに切り裂いてやろうかと思うくらい憎らしかったぞ 』
青年に斬られたヤンの顔は、隙間から片目だけを覗かせて、半分が包帯に覆われていた。
『 謝れよ 』
『 …ここは何ですか!この馬車は、いったい何処へ…っ 』
『 …ハァ 』
ヤンを相手にしない青年は、揺れる馬車にあいた窓から外を見た。
無限に続く砂地のはるか遠くに彼等がいた街の城壁が見える。
すぐに馬車から飛び降りようと後ろへ向かった青年を、溜め息をついたヤンが足で蹴り飛ばした。
音を立てて青年の身体が反対側に転がる。
『 …っ 』
『 既に日は明けたのだから手遅れだ。今ごろ俺とお前は脱走者…裏切り者だ。戻ったところで殺される 』
『 何故…っ…僕の邪魔を…!! 』
『 ふん… 』
もはや戻れない状況を突き付けられ、青年は憎しみをこめてヤンを睨んだ。
自分がヤンに大怪我を負わせた事はどうでもいいのか忘れたのか…。ヤンにしてみれば大層な態度だ。
やはり殺してやろうかとヤンは本気で考えたが
…揺れる馬車の中で、改めて腰を下ろした。