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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第34章 崩壊
「何用でしょうか、……おや」
相手の男達が慌ただしい足音で集まってくるのを、タランは門を開けずに待ってやる。
「君は確かバヤジット将官殿のところの部下ではないか。いかがされた?」
「バヤジット・バシュ 麾下(きか)三十名の近衛兵です。将官の指示で、昨夜王都地下から逃げ出したとされる不審な平民達を捕らえました」
「……」
バヤジットより少し歳上のその男は、騎兵師団の副官だった。
「捕らえた者達への審問により、彼等がクオーレ地区の地下空間で、何かしらの兵器を製造していた事がわかっております」
「地下、でございますか。それでどうして私の元へ?」
「地下に集められた平民はウッダ村に民兵として徴用された者達でした。侍従長殿の関与が疑われます!」
「……私の?ふっ」
爆発騒ぎで外へ逃げていた平民は、ひと足早く近衛隊に見つかったようだ。
つめよる副官に対し、タランは落ち着いた態度でこたえた。
「何のことやらさっぱりですな。確かに私は、稼ぎを失った民の為に私財を投げうち徴兵するよう進めましたとも。…だから、何だという話です。仮に別の場所へ連れて行かれた者がいたとして、私とは関係ありません」
「あっ…貴方が集めた平民ではないですか!何者かが手引きしたのは明らかだ。知らぬ存ぜぬで押し通せるとお思いか?」
「当然、何の証拠にもなっておらぬ。むしろ責任があるとすればウッダ村に駐屯している近衛兵ですな」
「くっ…!」
「私の関与を疑うならまず証拠をそろえてください。…それと、裁判院からの令状をね」
「非常事態ですぞ!」
「であれば尚更、冷静な対応を求めますよ」
タラン侍従長は冷ややかな目で彼等を一瞥した。
裁判院からの令状?
そんなもの、ラティーク・タラン・ウル ヴェジールに対して、裁判官らが許すはずもない。
その時だった。別の近衛兵が慌てた様子で馬を走らせてきた。
「副官!大変です!」
「どうした?」
「証拠を押さえに神殿跡地に向かいましたがっ…隠し階段の下は水没しておりました!中に入れません!」
「なんだと…ッッ」
調査をしに向かった現場は、なんと水に浸かっているという。
副官の男は咄嗟にタランを睨んだが、タランは涼しい顔で沈黙し、邸宅の中へと去って行った。