この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第34章 崩壊

 玄関に戻ったタランを使用人が迎える。上衣を脱いで渡し、タランは自室に向かった。

“ 万一に備えた " 処理 " はした。水の底では調査もできまい。しかし、平民(かちく)はやはり外に逃げていたか…あの複雑な通路をどうやってぬけた? ”

 広い公爵邸の一階にある彼の自室には、磨かれた石壁に一流画家の絵画が並ぶ。奥の壁にしつらえた暖炉には常に火が灯り、部屋の空気を温めていた。

「……そうか、バヤジットの仕業か」

 憎々しげに呟きながら、彼は調度品の引き出しから、昨日しまっていた物を持ち出した。


 藁(わら)で編まれた左腕だ。


 汚れたそれを、くるんでいた布から取り出した。


“ あの者は……死んだであろうな ”

 奪った相手の事を考える。

 絶体絶命な場面で嬉々として笑う…薄気味の悪い最後の姿が脳裏に浮かび、義手を持つ手を震わせた。

 爆発に巻き込まれたか、もしくは牢から逃げれずそのまま水の底か。だがもし…万が一にでも逃げ出していたらと…朝から気が休まらない。

 タランは慎重に、義手の接合部から網目を崩していった。

 乾いたワラの切れ目をほどくと、内側に筒状の鉄があった。適度な重さを持たせるためのものだろう。さらにその中に入っていたのが……

 これだな

「こんなところに隠すとは、用心深い奴だ」

 そこにはタランの予想どおり、ひとつの書状が隠されていた。

 年季のはいった古い羊皮紙を広げ、タランはそこに書かれた陛下を名乗る " 偽 " の書状を見た。

 あの日、王弟による国王暗殺騒動の後──

 手下に探させたがどこからも見つかりはしなかったこの書状、ハナム王妃が隠していたとは盲点だ。

 それを今さら持ち出して…

「…っ…忌々しいことだ」

 タランは書状を縦に破り、それを手に暖炉まで歩いた。

 パチパチと薪が燃える上に書状を放る。

 投げ入れられた羊皮紙が炎に当たり黒く焦げ、あっという間に灰となって跡形もなく消え去る。

 それを確認した後、ゴミを捨てる感覚で、残った義手も暖炉に投げ捨てた。

「さて…次は…」

 義手については燃え尽きるまでを見守らず、タランは暖炉に背を向けて離れる



・・・・・



 その、──数秒後の事だった



 控えめに燃えていた暖炉の火が、タランの背後で爆発した。




/401ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ