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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第35章 断罪審議
「…っ…これはどういう冗談ですかな?この者はキサラジャの王宮警備兵だがっ…もとの身分は都外の賤人。私とは接点など持ちようのない男です」
「賤人だろうが何だろうが…利用できるものは利用する、貴公はそういう男であろう」
「ふっ…間違えてはおりません。だが " こんな物 " は使わない!この……人をたぶらかす異質な容貌っ……目立ちすぎて偵察に不向きだ」
苦苦しげにシアンを見下ろしそう言い切った。
何がどうなってシアンが密偵として連れてこられたのか知らないが、タランにとっては茶番でしかない。
不愉快極まりない。
くだらないと一掃しようとしたタランだが、帝国使者は彼の言動に頷き、答えてみせた。
「……確かにこの者は目立っていたな、我が宮廷で。どこの馬の骨ともわからぬ異人の身でありながら、太袍官(たいほうかん)として陛下の傍に置かれておった。
──火槍(シャルク・パト)の設計図とともに姿を消すまでは」
「……た……太袍官(たいほうかん)……!?」
今度こそ、神殿にいるキサラジャ側の全員が動揺した。
太袍官とは帝国において皇帝の補佐役として臨時におかれる官職であり、階級こそ高くないものの、あらゆる文官武官に口を出せる唯一の立場だ。
“ この使者は急に何を言い出した?こいつが帝国の官職についていたなどっ…そんな冗談をどう信じろと ”
突拍子の無さに再び言葉を失うタランへ向けて…
足元に転がるシアンが、ようやく口を開く。
「申し訳ありません……タラン様」
「……!?」
「このように敵国に捕まり、タラン様に仰せつかった責務を果たす事叶わず…」
シアンがその時発したのは、帝国の言葉だった。
帝国の使者は皆の目が集まる前で、改めてシアンを尋問する。
「シアン、貴様が我が宮廷に潜伏し火槍の情報を盗んだのは、ラティーク・タラン侍従長の指示で間違いないな?」
「……、ええ」
「兵器の製造は王都の地下道で進められたと言う話も事実だろうな?民兵として徴兵した平民をそこで作業させていることも」
「…その通り、です」
シアンは、目の前で怒りに震えるタランを無視し、神殿中に聞こえる声で話した。