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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第35章 断罪審議
「タラン様が最も警戒していたのは、密造の発覚自体ではなく…製造方が外に漏れる…コト でした。よって、いざとなれば水路を決壊させて全てを水没させられるように、王都の、地下通路を、選ばれた」
痛めた喉で途切れ途切れに話す彼の声が、それを聞くために静けさを増した、周りの侍従達へと訴える。
「…僕は…その兵器の完成こそが…キサラジャ繁栄の礎(いしづえ)となると信じてきた…!ですが帝国使者(かれら)に言われました。タラン様はこの兵器を、陛下ではなく私利私欲の為に利用しようと、している」
「……ッッ」
「貴方は火槍(シャルク・パト)で武装した民兵を近衛兵と戦わせ、キサラジャを奪い取ろうとお考えだ」
「黙らないか!」
咄嗟に手が出そうになるタランを、帝国の武官達が阻んだ。
兵器が王都の地下で造られている?
それで民兵を武装させて戦わせる?
これまで誰も耳にしたことすら無い話だ。帝国に対してならまだしも、何故、国内部でも秘匿されてきたのか?
キサラジャの侍従たちは、徐々にそれまでの呑気な姿勢を消し去り、タランの反応を見定めていた。
タラン侍従長が謀反人である──
そう言ったも同然なのだ。この生傷だらけの青年は。
「…っ…黙っていれば好き放題言いおって。貴様…誰を相手にしているのかわかっているのか?」
「否定は、しないのですか?」
「否定するまでもない!貴様も、そこの使者殿の言い分も、どれもこれもが憶測だ。私が地下で兵器を造らせていると言うならっ…まず証拠を用意しろ。貴様の猿芝居以外のな」
周囲の微妙な反応に危機感を持ち、タランは声を震わせて怒鳴った。
足元のシアンへ高圧的ににじり寄る。しかし別の者が新たに神殿に入ってきて、突然の大声を響かせた。
「──憶測ではない!」
神殿の入り口で叫んだのはバヤジットである。