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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第35章 断罪審議
「…っ…バヤジット将官か」
「地下から逃げ出した平民の身柄は、俺の部下が保護した!タラン侍従長殿…貴方の手口は必ず明らかになるはずだ」
「ふん、それがなんだ。平民の証言などあてになるものか…!」
「それにたった今、侍従長殿の邸宅で起きた騒ぎについても」
本調子ではない身体をかかえ、朝から王都を駆け回っていたのだろう。ぐらりと疲れを隠せない足取りで、バヤジットは二重列柱廊を歩いてくる。
そして帝国使者の横を過ぎ、床に倒れるシアンの姿を見下ろすと……
彼を背後に庇い、タランとの間に割って入った。
「原因を調べる中で、破壊された暖炉の下に…地下へ伸びる " 穴 " があることが発覚した」
「なっ…貴様、何を勝手な事をしている!? 私の家へ無断で調査にはいるなど…!」
「人の胴体より小さな穴だがかなり深い。そして水没した地下空間に直結していた。これは──地下の鍛冶場(かじば)と繋がる煙突だ」
「く…!?」
「ずっと謎に思っていた…!兵器を造るなら火と鉄を必ず使うが、その為に必要な煙突が、この付近にあったろうかと…」
話しながら突き出したバヤジットの掌は、穴の内側に付着していたススで真っ黒になっていた。
「煙突は此処へ繋がっていたのだ!
たとえ貴方の家から四六時中 煙が立ち昇っていようとも、誰も不審に思わなかっただろう」
暖炉の下に隠されていた真実を、バヤジットはここで告発したのだ。
「貴方が陛下に隠れて武器を造らせていた証拠だ。よりにもよってその暖炉にまで爆発がおよぶとは運が悪いな」
「…っ…黙りたまえ!バヤジット将官」
狼狽するタランの前で堂々と振る舞う。
キサラジャにおいては、民も武力も、それの所有は王の特権。たとえ貴族と言えど奴隷や私兵を持つだけで罪に問われる。
タランの立場は非常に不味い事態になっていた。