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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第35章 断罪審議
帝国も、シアンも、バヤジットも、そして背後の侍従達も──
四面楚歌であるこの場所の空気が、タランの肌に焼け付くように刺さった。
“ 何たる事だ…!ここまで都合の悪い事態が、まるで示し合わせたかのように…っ ”
どれもこれも想定の枠を超えている。
…どこからだ?
帝国との対立も、火槍の密造も、リスクはもちろん考慮していた。それを踏まえての計画だった。
なのに──…どこから崩れていった?
悪夢のようだ
「──いい加減にしたまえ!此処は神聖なる大神殿だぞ!?」
タランはこれまでにない荒っぽい声で、四方に向けて叫んだ。
「このような茶番をしていい場ではない!貴様らの戯れ言は他で語れっ…時と場所をわきまえよ」
そして目の前のバヤジットを指で差す。
「私を罪に問おうならばな…その主張は裁判院でおこなえ。しかるべき順を取り──令状を持って来るがいい。
この場で争おうと無駄なことだ!」
普段とあまりに違うタラン侍従長の態度に、ほとんどの者は呑まれた様子で息を殺した。シアンも冷めた目で静観している。
そのせいで よりいっそう……タランの叫びが遠くまで響いた時である。
「──…令状が欲しいのならば、くれてやろう」
小さく──張りのない、しかしその場の全員を凍り付かせる男の声が、侍従長へと向けられた。
「──…!」
それを耳にしたシアンは時が止まったように硬直する。
肌の下を巡る血潮がその一瞬だけ流れを止め、反動で震えた心臓が、正常な鼓動を忘れた。
「国王陛下!?」
侍従たちがいっせいに立ち上がり背後へ振り返る。
そこでようやくシアンの心臓は動き出し、早鐘へと変わってうるさく鼓膜を叩き付けた──。