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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第38章 新たな思惑
「私を信じん……か」
サルジェ公爵は皮肉げに笑った。
「申し訳ありません」
「よい、仕方のないことだ。私は長らくタランの暴走を止められず……国をここまで追い詰めた無能な役人だ。急には信用できんだろう」
「……」
そこまで言い切るつもりはないが、あえて否定する理由がないのでシアンは沈黙を返した。
「だが伝えておく……。私は必要以上の権力を望んでいない。私が理想とするのは、あくまで王族が力を持ち、君主制が成立している状態だ。二度と、タランのような馬鹿者を出さないためのな」
「貴方は……」
ふとシアンは、必要以上に真っ直ぐ注がれる視線を前に、この男が " どこまで " を知っているのかを勘ぐった。
公爵は、あのハナム王妃の実父である。
「貴方は先ほど、僕の素性を知らないと仰りました」
「そうだったな」
「……それは本当ですか?」
「……」
今度は公爵が沈黙した。
歳を重ねて多くのシワを刻んだ顔からは、真意をくみ取り辛いが、少なくとも敵意は感じない。
試しているつもりか?
「…耳にした情報はいくつかあるが…、真実か否かは、貴公が私に打ち明ける日まで待つとする」
逆に発言をシアンにゆだねて、公爵は上手くかわしてみせた。
「まぁそれも後でよい。私を信用できたなら話したまえ」
「寛容ですね」
「当然だ。私は貴公を気に入っている」
それから公爵は、器を傾けて茶をくいと飲み干すと
「──…それは陛下も同じだ」
「……!?」
まったく茶器に手をつけようとしないシアンへ、声色を落としてそう告げる。