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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第38章 新たな思惑

「陛下が…?なんですか」

「陛下も貴公を気に入っている。ここだけの話だが、貴公の無罪放免を私に指示したのは…あの御方だ」

「なっ…!? 」

 驚きと同時にシアンは席を立った。

「さすがに動揺しておるな」

 公爵がその反応を笑う。


「そこでだ。貴公を呼び付けた本来の用だが──…王室での陛下の護衛を命じれば、それを望むか?」

「王室っ…でございますか?」

「先ほども言ったがとにかく人の手が足りん。陛下の身辺を警護する重要な役目を、引き受けてくれると助かる」

「……!」


 焦るシアンが机に手を突き、茶器が揺れる。


「正気とは思えません。僕のような身分の者を」

「貴公はハムクール伯爵家の養子。身分については問題ないな。剣術の心得もなかなかだと、噂に聞いておる」

「しかしっ…」

「くわえて陛下の信頼もあるゆえ適任だ」

 賤人出身のシアンが王宮警備兵になったことじたい、タランの権力で強引に進めた結果だ。

 なのに次は陛下の護衛を……?

 シアンが耳を疑うのも無理なかった。


「どうする?引き受けてくれるか?」


「……」


「嫌なら無理にとは言わんが」


「…っ」


「…?」


「いえ、取り乱してしまい失礼しました」


 異例だが、悪い話ではない。

 シアンはなんとか自身を落ち着かせて…再び椅子に座った。

「陛下の御身をそばでお守りできるなど…身に余る名誉です。お引き受けします」

「そうか!よい心がけだ」

 たとえどのような思惑がひそんでいようと、今さら恐れていられるか。

 シアンは公爵を信用したわけではなかったが、かりそめの笑みを相手に向けて、出された茶を優雅にたしなんだ。








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