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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第39章 偽りの色

 突如として終わりを告げた手淫は、まだ余韻だけでビクビクと跳ねる裸体を残して離れていった。

「カ‥ハ‥‥‥ッッ」

 けれど彼の脳は終わったことに気付いておらず、上手く処理できていないのだろう。

「‥‥‥ぁ、ああ」

 開いたままの口からは、苦悶の声が途切れない。

「‥‥ッ…ぅ‥‥‥ハァ、ハァ‥‥」

 陰部を隠せない無様な姿で拘束された彼は、少しずつ痙攣がおさまる中……

 熱っぽさが消えない瞳で、虚ろに前方を仰ぎ見た。



「‥ッ‥‥こん な、目」


「………」


「‥‥貴方に‥‥疑念 をいだかせ る‥‥くらいなら、こんな目──‥‥すぐにエグり落とし て‥みせたで しょうに‥‥‥!」


「……、であれば」


「‥‥‥ハァ‥‥‥ハァ」


「お前の其の左腕も──…同じ理由で捨てたのか?」


「‥‥‥‥」



 シアンは言葉を返さなかった。

 それは返答を拒むというより、返す気力も残っていない…理由はそんなところであった。

 頷いたとも、項垂(うなだ)れたともとれる所作で、彼の頭がガクりと下がる。

 アシュラフは立ち上がった。

 君主の問いかけの意味を理解できない近衛兵は、互いの顔を見合い戸惑っていた。



「貴様らはもういい。そいつを置いて退室しろ」

「…っ…しかし宜しいのですか?この者は西国の密偵かもしれないと…」

「そうだ、よってしばらくは監視を続ける。逃がしはしない…」

「き、危険では……!?」

「……」

「いえっ…その、承知しました。我々は失礼させて頂きます」

 アシュラフの視線に気押された彼らは、王命に従い、ぞろぞろと部屋を後にする。

 慌ただしく足音が遠ざかり、扉の向こうにバタンと飛び出していった後──

 代わりに近付いたアシュラフが、残されたシアンの前にいた。




──


「実に長い時間…………苦しめたな」

「‥‥ァ!‥‥ぅ゛」

 細かな刺繍に覆われた袖を垂らして、アシュラフが手を差し出す。

 彼はシアンの屹立の根元を締め付ける布をとり、結び目に指をいれて抜き取った。


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