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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第40章 壁越しの約束


 だから、こうして牽制に来たのか。


《 俺はお前に惚れているんだ、シアン 》


 そんな戯言をつむいだところで、結局、シアンを信用していない。

 物珍しさから手元に置いてみるものの、疑心の念はぬぐえていない。


 結局、貴方もそうなのだ

 スルタン・アシュラフと同じように──。



「……っ」

「何故、黙っているのです?」

 外のバヤジットは口元に手をやり、ああ、と項垂れて壁に背を付けた。

 そして壁にもたれたまま、ずるずると腰を落とした。

「とくに用がないのであれば、僕は陛下のところへ戻りますよ」

「いやっ……違う、話す事はある」

 シアンに問いつめられた彼は

 恥ずかしそうな…気まずそうな表情で、片手を額に当てて答えた。


「ただ……そうだな。お前の言うように、まずそれを気にかけるべきだったと……反省していた」

「……?」

「俺の用というのはな、その、…お前の好きな物を教えてほしいというもので」

「は……?」

 今度はシアンが言葉を失う番だ。

 それがますます恥ずかしかったのだろう。バヤジットは慌てていた。


「もうすぐ生誕日だろう?」


「…!?」


「だから──…お前の、生誕日だ」


 ナンの話だ

 手ぬぐいを持つシアンの手が止まった。


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