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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第40章 壁越しの約束
「それで何を贈るべきか考えたのだが……っ、俺はそういうことがよくわからんっ。街に出たりもしたのだが、装飾品は女に贈るものだし、香油のたぐいも…どれも同じ気がして、シアンに似合うものを決めきれない」
「……」
「なら食い物か?と思ったが、それこそお前は飯をあまり食べないしな」
「…ッ」
「それか、ああ、そうだ新しい義手はどうだ?もとのは失くして今は代用品だろう?身体にあった使いやすいのを新調させる。どうだ!」
弁明のように早口で喋るけれど、話せば話すほど情けなくなってくる…。
自覚しているバヤジットは、誰が見ているわけでもないが、顔を赤くしてまくしたてた。
「…まぁ、そういうことだからお前の生誕日を祝おうにも!祝いの品を用意できなくて困っていたんだっ……もう直接聞いたほうがいい。──おい、どうした?」
だがその時 物音がやんで、壁向こうのシアンの様子がわからなくなる。
「シアン?聞いているのか?」
バヤジットは振り返って、足元の小さな排水口に顔を近付けた。
シアンの声がしない。
「どうした?どうして黙るんだ?」
「──…」
急に声が途切れたので、バヤジットは不安になった。
何かあったのか──
まさか、シアンの護衛任命をよく思わない連中に、襲われていやしないかと──
嫌な予感にみまわれる。
「シアン!何があったんだ返事をしろ!」
「……………ふふっ」
「──…?」