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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第41章 愛と憎悪
わかっている……
とっくの昔に、陛下には愛想をつかされている
“ わたしが陛下のお心を掴んでいれば…っ ”
もしハナム王妃とアシュラフの仲が良好で、二人の間に世継ぎが生まれていたら、何もかもが違った筈だ。
ハナム王妃が暗い顔で俯いていると、公爵は声を小さくして彼女に提言した。
「……はぁ、そこまで思い悩むでない、ハナム。心配せずとも、もうじきお前は世継ぎを授かる。私の言う通りに動くだけでな」
「…!? 世継ぎ…?それはどういう意味ですか…?」
ハッと前に向き直ったハナムは、少しの希望をいだいて公爵を見る。
…けれど、それもすぐに不可能だと悟った。
「二日後の夜だ…陛下の寝所に行きなさい。侍従や使用人たちにも手を回しておく故、邪魔をする者はいない」
「つまりっ…!?」
「そこで王妃としての務めを果たすのだ」
「そ、そんなの無謀です!陛下に追い返されておわりです!」
「いや、陛下はその夜…酒をお飲みになる。毎年決まって、必ずだ。陛下は何かを忘れようとするかのように……眠りにつく前に、酒におぼれる」
公爵が話しているのは、アシュラフ王の奇妙な習慣についてだ。
普段はあまり酒をたしなまないのに、何故か毎年…同じ季節の同じ日に、部屋にこもって強い酒を飲み、聞き取れない独り言をポツリポツリとこぼしたかと思うと、気絶するように深い眠りにつく。
それが今年は、二日後の夜というわけだ。
「でもっ…陛下が酒に酔っていたとして、上手く事が運ぶとは思えませんわ…!」
酔っているから、それがなんだ。そんなことで陛下が自分を抱くなら苦労していない。
疑念をいだくハナムに対して、信じられない言葉を公爵が口にする。
「──…勘違いをするな。
お前がそこで契る相手は、陛下ではない」
「は……!?」
「寝所にはもうひとりいるだろう。王家の血を持つ……別の男が」