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謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く
第41章 愛と憎悪
絶句するハナム王妃。
だが彼女は、その意図する男が誰であるかを瞬時にさとった。
「お……仰ってる意味が分からない わ。別の男…!? ふふ、ナンの冗談」
「下手な芝居はやめなさい」
「……っ」
誤魔化さなければ
咄嗟に浮かべた作り笑いも、すぐに見抜かれる。
「お前が裏でこそこそ動いているのを私が知らぬと思ったのか?愚かな娘よ…。雇った賤人どもに人探しをさせた次は、見つけたそやつを近衛兵としてクオーレ地区に引き入れおって」
「そっ…れは、違うの…」
「奴は諸刃の剣(つるぎ)。安易に呼び戻していい者ではない」
ハナム王妃の裏工作
それは公爵に筒抜けだったのだ。
ハナムにとって、陛下の傍らにいたタラン元侍従長が邪魔だった。だから彼女は王弟の行方をおった。
タランの企みを暴くための切り札として必要な彼を……必死に探した。
都外の売春宿で見つけたシアンを、クルバンとして王宮に呼び戻したのだ。
そんな彼女の作戦は上手くいったように見える。ラティーク・タランは失脚し、帝国に引き渡されたのだから。
…けれど、その作戦の詰めの甘さを、ハナムを見る公爵の厳しい表情が物語っていた。
事が上手くいったのは運が良かっただけだと。
「しかし結果として──利用価値はあったがな」
「……!!」
「よいか?シアン・ベイオルクの種を受けた後、就寝中の陛下の寝台でともに眠るのだ。翌朝になって陛下は驚かれるだろうが…酔ったゆえに記憶が抜け落ちただけと説得できる」
豊かな髭で隠れた口元に笑みを浮かべ、公爵はハナムに念を押す。
ハナムは恐ろしさのあまり、顔から血の気を失っていた。
「これで王家の血筋は、我がサルジェ家のものよ」
そんな娘の心境に気付いているのかどうなのか…
どちらだろうと公爵は、彼女に逃げ道を与える気はさらさらないようだった。
───…